「通過点」
開いたドアから凍える様な風が吹き込んできた。
あたしは必死にドアにしがみ付いて身を守ろうとするけど
あなたは残酷にもそんなあたしの背中を押した。
冷たい、冷たいアスファルトの感触を頬から感じて。
涙が止まらなかった。
あなたは涙ひとつ見せないで「仕方ない」とだけ呟いた。
あたしの長い睫はほとんど凍りついて目を開けることさえ困難だったけど
あなたが乗った電車がホームから出て行くのを見ていた。
何が仕方なかったのか分からずに
あたしは駅のホームに座り込んで空を見上げた
降ってくるように錯覚すらおきるほどの星の数
あぁ、やっと分かったわ
何が「仕方なかった」のか。
あたしにとっては終着駅の恋でも
あなたにとってはただの通過点でしかなかったのね
そしてあたしはただただ星を眺めてた
だってあたしはもう終着駅に着いてしまったのだから